2012年7月5日木曜日

「君子豹変す」はいいことだ。野田首相


「君子豹変す」というのは、よく否定的な意味で使われる。でもそれは間違いだ。

① 〔易経革卦〕 君子は過ちをすみやかに改め,善に移ることがはっきりしている。
② 俗に,今までの思想・態度が急に変わること。
(net版大辞林より。)

別のnetの用語解説によると
▼易経の原文をたどると、「君子豹変、小人革面」とあり、「立派な人物は、自分が誤っていると分かれば、豹の皮の斑点が、黒と黄ではっきりしているように、心を入れ変え、行動の上でも変化がみられるようになる。反対に、つまらぬ人間の場合は、表面上は変えたように見えても、内容は全然変わっていない」と述べています。 
と書いてある。


さしずめ野田首相は、君子豹変すそのもだろう。民主党のマニフェストが書かれたのは3年以上も前。リーマンショックが起きる前だ。(リーマンショックがどのくらいの「ショック」なのか私には正直ちょと分からない)
いずれにしろ、その後世界経済は悪化したのは確かだし、よく言われる日本の国債残高の異常な多さは、シロウトが見ても、どう考えてもまともじゃない。そうした状況を受けて、野田さんは消費増税に突き進んだ。君子豹変した。


それは大半の新聞大手の支持を得、また産業界からも支持されている。これはこれで「民意」だと思う。(が、東京新聞にとっては「民意」ではないらしい。)

消費税増税の時、あんなに反対した日本商工会議所や小売業団体、主婦連(もはや力もないだろうが)なんかも「反対している場合じゃない」ことがよく分かっている。

経済学者やエコノミストの中には、日本の個人金融資産がまだ1200兆円あるとか、日本国債はほとんどが国内で消化されているので「大丈夫」という人もいるが、その理屈はもはや通らなくなっている。

◆菅直人のブレーンだった阪大の小野善康は、この手の主張を昔からしていた。かなり古くなるが「景気と経済政策」(岩波新書)には、じゃぶじゃぶ国債を発行して景気を刺激しろというようなことが書いてあり、当時国会の自民党側の参考人としてそうした発言もしていた。当時この本を読んで、どうもうさん臭い感じがしてので、どういう訳かそのことをハッキリ覚えている。時の政権(小渕のころだったかな)の膨大な国債発行にお墨付きを与えた「戦犯のひとり」だと理解している。
菅はなぜ小野をブレーンにしたのか。経済がわからない(自ら学んで分かろうとしなかったと言った方が正確か)菅が、耳障りのいいことばかり言う御用学者に飛びついたのだろう。(割と最近、朝日が小野を持ち上げたインタビューをしていたのには驚いた。)




話しが逸れたが、新聞は今になって民主党のマニフェストを「財源の裏付けのない絵空事」と書き立てるが、当時はそれほどの主張は見当たらなかった。
マスメディアの「後出しじゃんけん」は、毎度のことだから驚かないけど。


ともかくも財務相も務め、また経済をよく学習している(方だと私は思っている)野田首相が、消費税増税に「命懸け」なのは、何も財務省のあやつり人形だからでも、頑固一徹だからでもないと考えるのが自然だろう。本当に日本の財政の行く末を心配しているのだ。そしてその心配はかなりの確率で「正しい」


マスコミに登場するエコノミストで信用がおける(と思われる)発言をしている人は意外に少ない。
阪大・大竹文雄さん、慶應・樋口美雄さん、一橋・小林慶一郎さん、みずほ証券・上野泰也さん、バリバ証券・河野龍太郎さん、などなど。
(ほかにもいるでしょうが、今すぐに思いついた人ですこれは)


こういう信じるに値する経済人で消費税の増税が必要ないと言っている人はいない(はずだ。)
もちろん消費税を上げれば大丈夫と言っているのではなく、「その先の日本」はまだ心配しているけど。


欧州危機の第一波がきた時、新聞各紙・NHKの(お手軽)世論調査では、消費増税もやむなしとい「意見」が割と多かったと思う。が、日を経て消費増税が政争の道具にされ、最初の危機感が薄れてくると、メディアのおバカ報道もあり、世論は次第に「増税反対」に傾いていった。


野田首相は、日和らなかった。そこはエライと思う。だって選択肢としては、先送りもできたのに、そうしなかったのだから。



◆◇◆◇◆◇◆
世論がどうして「消費税反対」に変化していったのか。メディアはあまり分析していない。だって自分たちの煽る報道で変節していったのだから分析なんかできないのだろう。
人は無意識に嫌なこと(増税)をなるべく見ないよう、考えないないようする。当初増税が必要と考えていても、なかなか政治が決められないで期間が長くなると、次第に否定的な思いが大きくなる。それで世の中が回るのかといった「(増税反対に)都合の悪い情報」は意識から排除されていってしまう。それが続いて世論は変節していった。「いまのままでもいいじゃないか」と。同様の無意識の心理変化は不勉強な国会議員にも表れていったのだろう。小沢ガールズたちなどは。



0 件のコメント:

コメントを投稿