2012年3月12日月曜日

野口みずきは、尾崎好美 女子マラソンの2人の闘い方に学ぶ

日本人1位 尾崎好美
日刊sports webより引用
名古屋ウィメンズマラソンは、尾崎好美(30)が日本人1位(2時間24分14秒)になり、五輪の金メダリスト野口みずき(33)は6位(2時間25分33秒)に沈んだ。
野口はレース前半でペースメーカよりも前に出てレースを引っ張ったが、17㎞付近で先頭集団から脱落。後半一度は先頭集団に追いつく粘りを見せたが、登り坂でついて行けなかった。尾崎は反対に常に先頭集団にいながら決して前に出ることはなく、うまくレースを運び、スパートしたロシアのマヨロワにはついて行かず、「日本人1位」にこだわった走りで、最後に中里麗美を振り切った。
野口はなぜ、シロウトにも無謀と思えるペースメーカーの前に出る走りをしたのか。おそらく最初からじわじわ差をつけて行き、その貯金で走り抜かなければ勝てないと、「一発勝負」に出たのだろう。、年齢的なことこ、股関節の故障のことなどから、後半でスパートされるとついていけないことをすでに悟っていたのだ。しかし、それは実を結ばなかった。

尾崎はしたたかに、いわゆる「勝負にこだわった」。彼女の(今回のレースの)目的が「五輪代表になる」こと、その1点だったことがよくわかる。無理もない、2度レースで失敗していて、今回が最後のチャンス。また年齢からするとロンドン五輪の次はないからだ。
このブログを書いているころには、おそらく五輪代表に内定するだろう。(午後3時40分 内定のニュース速報が流れた。)

しかし尾崎は、おそらく五輪では勝てない。どのくらいの成績を残せるか想像できないが、8位入賞が精一杯だろう。でも彼女にとっては初めて(そして最後になるであろう)五輪の大会に参加することが目的なのだから、きっとそれで彼女自身は満足するだろうし、周囲や日本の観衆もそもそもそれ以上を期待はしない。そして尾崎は五輪参加を契機に、レースからは引退する(はずだ)。

泣きながらフィニッシュ
野口みずき
日刊sports webより引用
しかし野口みずきは、たとえ選考レースに勝って五輪代表になっても、アテネのメダリストという接頭語は消すことができない。再び金を期待されてしまう。そのことを彼女は無意識に悟っていたのだ。だから「引っ張るレース」展開をした。レース後のインタビューで野口は、もう一度、多くの人たちの声援を受ける五輪の舞台で走りたい、という趣旨のことを言っていた。彼女にとっての「承認要求」は、かつて味わった「五輪で優勝して注目されること」だったことがわかる。
比較的地味な野口は、五輪後、高橋尚子のようにはマスコミにもてはやされることはなかった。彼女を奮い立たせるものは五輪への道以外見つけられなかったのだ。

スポーツ選手には2タイプがあると思う。ある程度の成果を残すと、スパッと引退し、他の展開を考え道を歩むタイプ。もうひとつは、ずっと現役にこだわるタイプ。どちらがいいとか悪いとかという問題ではなく、生き方の問題だ。なぜ現役にこだわるのか、それぞれ理由はあるのだろうが、その一つが「過去の成功体験」の呪縛なのかもしれない。(野口がそうだとうは、必ずしも言えないと思うが・・・。)

成功体験と、それに伴う注目、賞賛の目が忘れられず、同じものを追い求めてしまうことは、ヒトに限らず企業の生産活動でもよくあることだ。しかし、願いが成就しない場合、傷が深くなり、ますます「成功体験」の夢から抜け出せなく陥穽もあることは、認識しておかなければならない。

尾崎の選択は、「身の程」を知った走りだった。そして彼女は「身の程」の生き方をこれからも選択するのだろう。それも悪くはない、と思う。

PS:
まだハーフの距離しか走れない私にとって42,195㎞を走り切る時に「どう走るか」というその構成は想像もつなかない。でも2時間20分~25分という長い時間の中で、「1分」という差が、そんなにたやすいものではないことは、少しは分かる。


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