2012年1月12日木曜日

元旦の各紙の社説を読み比べる

毎年1月1日の新聞は定期購読紙以外も購入し、よく読むようにしている。元旦の1面はどの新聞も企画に力を入れている。また社説も、その新聞の“姿勢”を知る上で参考になる。
さて、2012年1月1日の各紙(朝・毎・読・日経・サンケイ・東京)はどうだったか。
まず社説から
朝日…「ポスト成長の年明け・すべて将来世代のために」
毎日…「問題解決できる政治を」
読売…「『危機』乗り越える統治能力を~ポピュリズムと決別せよ」
日経…「資本主義を進化させるために」
サンケイ…「日本復活の合言葉『負けるな』」(年のはじめに 論説委員長署名記事)
東京…「民の力を今、活かそう」

印象で言うと、一番力が入っていたのは読売だ。
経済活性化は復興からと、成長促進を促しつつ、財政破綻もあり得ると、政治に党利党略を超えて財政再建に取り組み必要性を訴える。一方対中緊張への対応やTPP問題にも言及し、エネルギー政策については従来の主張である原発の再稼働を訴える。副題に「ポピュリズムとの決別を」となっているが、そのことには直接は触れていない。もちろんこれは政治を進めるために世論の反対があっても財政再建やTPP,原発再稼働等を進めてほしいというメッセージだろう。網羅的・具体的な社説で分かりやすいという点では光っていた。

読売新聞 2012年1月1日


対する朝日はどうか。
やはり財政赤字を心配するが、経済成長ばかりを追い求めることに異を唱える。去年ブームになったブータンの国民総幸福を引き合いに出し、草食系の若者の登場を「ポスト成長の環境変化に適応して進化」したからと言う新説を紹介。と、言いながら「新興国が激しく追い上げてくる大競争の時代」という認識を示しながら、「世界に伍していける若い人材」の育成を訴える。最期は、成長から成熟社会への転換を訴える。
論旨に一貫性を感じない、はっきり言って「分からない」社説だった。言いたかったことは成熟社会なのだろうが、それを実現させるのが、大競争時代に世界と伍していける人材というのは、どういう意味なのだろうか。理想主義を掲げるがその方法論や実現可能性に弱さがある、朝日の悪いクセとも言うべき内容だった。

朝日新聞 2012年1月1日
毎日。
マックス・ウェーバーやチャーチルの言説を引き合いに出しながら、「なぜ妥協しないのか」と、政治が進まない状況をもっぱら憂いているだけだった。
毎日新聞 2012年1月1日

日経。
グローバル化を経済再生のテコに資本主義の進化を訴える。

サンケイ。
「日本が強い国に生まれ変わるためには胆力と構想力を持った指導者が欠かせない」と、新年企画「The リーダー」と呼応した内容で、「がんばれ」と剛毅(ごうき)さ、克己、礼節を唱える精神論でまとめる。

東京。
民主党の消費税増税は公約違反だとして、また予算案を批判し、まず「無駄を徹底的に削る」ことが先決と、社民党の主張そのままみたいな論旨。最期は橋下の独裁を憂いて、デマに惑わされるなと締めくくる。新味のない東京(中日)の従来の主張だった。

こうしてみると、どれもアッと言うような斬新な主張はどれも感じられなかった。がっかりな社説ばかだ。朝日が2011年12月29日の「社説余滴」で「誰にも読まれる新聞社説を」と、読まれない社説に自戒を込めた一文を載せているが、ほとんど何も変わっていなかったと言わざるを得ない。
やはりこれでは読まれなくて当然だろう。
朝日の読者には富裕層でやや保守的な層からインテリ、組織労働者などおそらく幅広い層が想定されているのだろう。だからそれらの層すべてに「配慮」した言い回しになる。もっと言えば筆が甘くなっている。

それを克服しない限り、やはり社説は読まれない。当たり障りのない文章なんて読むだけ時間の無駄だから。

企画についての「感想」は次回に。

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