2012年5月7日月曜日

規制緩和の「罪とバス(罰)」 起こるべくして起こったツアーバス事故

関越道のツアーバス事故(netより引用)
クルマの運転は、常に事故と紙一重だということは、運転をする者は誰でも知っているだろう。

たとえヒヤっとした経験がなくても、もしハンドルを握る手が滑って方向が狂ってしまったらどうなるか。もし走行中にくしゃみが出て、その一瞬目をつむる間に前に人が飛び出したらどうなるか。考えだしたらきりがない。それは睡眠不足だとか、体調が不良だとかあまりカンケイがない。万全の体調でも人間の行うことだから、いくばくかの確率で起こりうることなのだ。ただ、それがこれまで“自分”に起こっていないだけだ。
もちろん慎重な運転をしていれば、事故の確率は格段に下がるだろう。しかしゼロではない。自己責任で、自らのクルマを運転することと、おカネをとって人様を運ぶのは別のものであり、それだけより安全が求められるのは言うまでもない。だから法律もある。
より安全を求めるけれども、運転というひとりの人間のする行為である限り、事故の確率は下がってもゼロにはならない。その意味では関越自動車道で乗客7人が死亡したツアーバスの自損事故は、俗人的な問題でもある。

運行会社の安全管理の問題はどうか。どんな問題があったかはいずれ明らかになるだろうが、お上(国土交通省)が、様々な安全対策の指針を作ったとしても、(もちろんないよりはいいかもしれない)ツアーバスの運行そのものがこれだけ甘く規制緩和されていれば、守らない業者が出てくるのはいわば必然である。「規制緩和」の「結果」、ツアーバスの事故の確率が上がったことだけは確かだろう。
中国の慣用句に「上に政策あれば、下に対策あり」というのがある。お上がいろいろ規則を作っても、下はその抜け道や方策を考えるというものだ。今後、安全運行のためにお上が様々な「規則」(指針)を作るだろうし、法律改正も目指すかもしれない。しかし守らない業者は必ず出てくる。
それは、様々な事象に私たちが経験的に知っていることだ。過度の競争に参入した(せざるを得ない)業者は、そうなることが構造化されているからだ。
規制緩和がイケナイだとか、バスの運行会社に問題があったとか、なかったとか、下請け構造に問題があるとか指摘したいのではない。
言いたいことはひとつ。クルマの運転は、非常にパーソナルな行為であり、フェイルセーフ【fail safe】が効かないということだ。交代の運転手を補うことはできても、2人では運転しない。ドライバーが突然トラブルに見舞われ、運転に支障をきたしたらそれで終わりである、ということである。

2人で操縦する(できる?)、旅客ジェット機にはフェイルセーフが効いている。新幹線など鉄道にも「自動列車制御装置」がある。原子力発電だって必ずフェイルセーフがあり、はるかに安全に「配慮」されている。しかし自動車には、ない。(アイサイトなど様々な技術が出てきてはいるが、まだ通常装置にはなっていない)

車の運転というのは、そういうもの。実は非常に危険な行為なのである。それも紙一重の危険だ。

バス事故に話しを戻す。事故をなくすにはどうしたらいいか。事故の確率を下げるために、ツアーバスの規制を元に戻せばいいのかというと、そう簡単な話ではないように思う。すでに緩和された規制は、そこに群がった業者や人々がすでにいる。ハシゴをはずすような行為はフェアーではない。しかもそこに需要がある。率直に言って難しい問題だ。


確率の問題として、ツアーバス事故がどの程度危険なのか。ちょっと計算するとおもしろいことが分かる。

ニュースによると、ツアーバスの利用者は年間600万人だ。今回の事故で亡くなったのは7人。単純に言うと、85万7千人に1人の割合で事故で死亡するということだ。人口で言うと高知県で一人ということになる。
一方、交通事故の年間死亡者数は、ここのところ減少傾向で、一昨年は約4,800人。日本の人口はおよそ1億2,800万人だから、交通事故で死ぬ割合は、大雑把に言うと2万7,000人にひとりということになる。
○85万人にひとり(0.000117%) と ○2万7,000人にひとり(0.0038%) 
こうして見ると、バスツアーで死ぬ確率は、交通事故で死ぬ確率に比してはるかに低いことが事実として浮かびあがる。(他にツアーバスで死亡事故が起きているかもしれないが、それはわからない)
つまり、ツアーバスに乗るより、歩道やガードレールのない通学路を行く小学生の方がはるかに、危険だということだ。(もっとも 0.000117%と0.0038%に統計的にどれだけ優位差があるかどうかは疑問だが。どちらも無視できる確率だろうから。)

結局リスクをどう見て、選択するかという問題だ。原発のリスクについては別項で考えをまとめたい。
ところで規制緩和の旗振り役は誰だったか。
このことは思い出しておく必要があろう。悲劇の根源はこういうところにあるのだから。

学者では、八代尚宏(元ICU教授)、財界では宮内義彦(オリックス会長)だろう。


八代尚宏(netより引用)

ほとんど宗教がかった信念で、「自由放任主義」を唱える八代は置くとして、宮内は、自分の会社の利益ために規制緩和を最大限に利用した諸悪の根源だ。



宮内義彦(netより引用)


規制緩和がなんでも悪い訳ではない。過度の規制が経済活動の活性化を阻害しているものもある。が、宮内の旗振りで、反作用・デメリットを十分検討することなくなされたものは多い。労働者派遣法なんかもその代表例だろう。


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