出羽の国の名峰・鳥海山の八合目付近から見渡した庄内平野とその向こうの日本海。我が人生もこのくらい見通せたらどんな気分なのだろうか。 一生を400㍍走に例えると50代はちょうど第3コーナーあたりかもしれない。 一番息苦しくなり、足が重くなっているところを耐えて走っている。 第3コーナーでは前を見てもまだゴールは見えない。レーズ全体をイメージするのが難しい。 第1コーナー、10代・20代のころは、わずか10年先さえも想像できなかった。 いつも未知の世界に向かって走ってきた。 バックストレッチの30代・40代は様々な制約の中でも、少し自分のペースをつかみながら前に進んだ。 第3コーナーのカーブに入ったいまはどうか。まっすぐ前を見ているだけでは、自分の立ち位置は見えてこない。体を傾けたままうまく周囲を観察しなければならない。50代、「いまだ天命を知らず」である。第3コーナーを抜け出し、最後の直線に入った時、そこにはどんな光景が待ち受けているのだろうか。その時どう身を処すればいいのだろうか。考えるしかない。 再レースはないのだから。
2015年9月10日木曜日
NHKのBS放送から、囲碁名人戦が消えた
囲碁名人戦のBSでの放送を、「公共放送NHK」はやめたらしい。
井山祐太名人と高尾紳路天元というファン垂涎のタイトル戦は9月4日から第1局が始まったが、NHKのBS報道はいつものような放送をやめてしまった。
これで衛星放送から囲碁将棋関連の放送を徐々に撤退していた方向性が一層はっきりした。
残念というか、もったいない。
かつてNHKのBS番組に「囲碁将棋ウィークリー」というのがあった。 確か土曜日の正午から1時間半くらいたっぷり時間をかけた番組だった。
内容は、囲碁も将棋も、1週間の主な対局結果を伝え、そして「注目の1番」の解説をじっくり行う。
毎回ゲストがきて、普段なかなか素顔が分からない棋士の方々の話に接することができた。そして私はこの番組が大好きだった。注目の一番では、単に対局の過程を追うだけでなく、なぜその1手が指されたか、その手の背景にはどういう意味があり、その時棋士は何を狙いにどうしてその手を指したか、ゲスト棋士がその人ならではの解釈を交えて解説する。
これがたまらなく好きだった。
そうか、この対局者はこの1手を打つのにこんなことを考えていたんだと、知ることは、観戦ファンとしてはたまらなく知的好奇心を刺激され、感心するばかりだった。
しかし私の棋力は将棋で10級、碁にいたってはほとんど計測不能なくらいの弱さだ。しかし観戦するのはたまらなく面白い。
「ウェブ進化論」で注目された梅田望夫さんは、私と同じような「観戦ファン」だ。(もちろん棋力は私よりはるかに上だろうが)。
「ウェブ・・・」で書かれたようには世の中は(まだ)ならなかったかもしれないが、彼の将棋に関する一連の著書は、なかなか面白い。将棋観戦ファンとして共感するところ多々あった。
彼もどれかの著書で書いていたが、「観戦ファンだと言うと、お強いんですか?と必ず聞かれる。そうではなくて、将棋を観るのが好きというのがなかなか理解されない」と。
野球ファンやサッカーファンは必ずしも野球やサッカーを実際に行う人ではないだろうし、行う人にしても、必ずしも得意ではないだろう。「観ることの方が好き」という人々が沢山いるはずだ。にも拘わらず将棋や碁では理解されないのはなぜか。
スポーツファンには申し訳ない言い方かもしれないが、スポーツよりずっと知的で奥が深いと思いんだけど。
衛星放送だけではない。公共放送から将棋や碁の放送がどんどん消えている。
くだんの「囲碁将棋ウィークリー」はBSから衣替えして日曜日午前中教育テレビのNHK杯囲碁と将棋の間に短時間で放送していたが、それも今は「囲碁フォーカス」「将棋フォーカス」という30分番組で、講座と話題中心で「注目の1局」を取り上げた観戦ファン向けではない。
タイトル戦中継は、将棋は竜王戦と名人戦、碁は本因坊戦と名人戦を行っていたと思うが、先日始まった囲碁の名人戦はBSの中継をしていなかった。
ついでに言うと、3月1日の将棋のA級順位戦最終局「将棋界の一番長い日」も中継をやめ、後日編集したものしか放送していない。
どうして、「公共放送NHK」から棋道が消えていくのだろうか。
ひとつはニコニコ動画で中継を行っていることもあるかもしれない。しかし例えばテニスではWOWOWで放送していても、NHK-BSで放送している。
棋道を愛する人が少ないということなのだろうか。
NHKの2つのBS放送は、今やスポーツ中継、旅、自然、歌、ドラマ、モノ(あからさま商品紹介はできないから、紀行風にアレンジして)ばかりだ。
確かにそれも悪くない。しかしいくらなんでも「多様性」がもう少しあってもいいのではないか。24時間放送しているのに、
囲碁将棋番組は、そんないオカネのかかる番組ではないと思う。俳優さんを連れていく海外の旅ものひとつ作るのに比べたら安いものだろう。
将棋や碁を愛する年配者はまだまだ多いと思う。そういう「お客さん」を逃していることに気付いてほしい。作り手や番組編成を行う人々に棋道を理解できる人がいないということなのか。
囲碁や将棋の観戦は、知的好奇心を刺激する非常にいいソフトなのに。
学校教育でも棋道を取り入れるところが出てきている。日本で進化し深化した将棋。碁は中国・韓国にちょっと遅れをとっているけど、それでも東アジアに発展する「すごいゲーム」だ。
NHKの衛星放送の番組の並びを見ていると、ここにも「大衆化」の流れが押し寄せいるように思う。何とかならないのかね。梅田さんもこの状況を泣いていると思います。
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