2011年12月7日水曜日

メディアのインタープリンターとしての役割

すでに、一山超えた感のあるTPP参加是非の論争。これははたして「論争」と言えるものだったのだろうか。12月7日現在、「対立構造」としてのTPPの報道は、皆無と言っていいかもしれない。

 朝日新聞が、細々と朝刊経済面で「おしえて!TPP」の連載で、各論の解説記事を載せているくらいしか目につかない。あの劇場型の二項対立の興奮が去って、ようやくメディアも本来の役割をはたそうとしているかに見える。


日本科学未来館(お台場)
  メディアの本来の役割とは何か。もちろん権力の監視、警鐘といった“お約束”の役割は大切だが、もうひとつの役割は、権威・権力と大衆とのインタープリンター(interpreter)としての役目だろう。

 もともとは、自然と人との仲介、通訳・解説者という意味。転じて難しい科学知識を一般の人に分かりやすく解説するのが「インタープリンター」の役割だ。わたしはこの言葉を、かつて、子どもと訪れた日本科学未来館(東京・お台場) http://www.miraikan.jst.go.jp/
で知った。

  ゲノムやニュート・リノなど、言葉は知っているが説明せよと言われるときちんと言語化できない科学用語はたくさんある。それらを一般のわれわれに分からせてくれるのが役目である。
 私が「ニュートリノ」が「ニュー・トリノ」でなく「ニュート・リノ」であることを学んだのも未来館の展示解説だった。

 そのインタープリンターとしてのメディアの役割が、劣化していると思わずにはいられない。一連の原発報道だけでなく、様々な科学的事象や“事件”について正確で分かりやすい情報は、これだけ複雑化する世の中においては不可欠だ。

 TPPを始め、消費税増税議論、復興予算の使い道など、分かりずらいことを「説明」するのがマスメディアの役割なのではないか。しかしメディアの主張は、政府・権力者に「もっと説明を」と求める
ことの方が目に付く。人は全能ではない。首相や政府の人間でも同様だ。だからこそ集合知を生かした説明をメディアが担う必要がある。新聞社にはそれだけの人材がいるはずだ。
 
 「説明責任」はメディアに方にこそあると、心得るべきではないか。そのために毎月4,000円近くの購読料という情報量を支払っているのだから。なにもテレビ欄を見るためにお金を出しているのではない。

 ※この件に関しては、「もうダマされないための『科学』講義」(光文社新書)の第3章、松永和紀氏の文章に詳しい。また別項で紹介したい。

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