2011年12月8日木曜日

「市民ランナー」川内優輝への日本陸連の冷たいまなざし

asahi.comより引用

12月4日の福岡国際マラソンを終えて、五輪選手の選考を行う日本陸連の幹部が会見を行った。一言でいえば、「戸惑い」と、「川内への冷たさ」でしかなかった。

判官びいきでなくとも、市民ランナーとして自分で何でもやって日本人選手の最高位になった川内選手には、おそらく多くの人が賛美をおくったのではないだろうか。

実況中継のアナウンサーも、盛んに「埼玉県職員、市民ランナー」を連呼し、強調していた。
反対に、解説の瀬古利彦は川内にちょっと冷ややかな印象を受けた。


瀬古は日本陸連の理事。母校早大陸上部(駅伝)の監督や所属のSB食品の監督だ。しかし瀬  古自身が企業のお抱え選手として「万全の態勢」で臨んだロス五輪では惨敗した。
(瀬古についてはウィキペディアを参照されたい
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%80%AC%E5%8F%A4%E5%88%A9%E5%BD%A6 )
  高校時代から将来を嘱望された存在であり、長距離のいわばアリーと教育を受けてきた。ソウ   
  ル五輪では彼のために選考レースが加わったなどと揶揄された。しかし東京都の教育委員を
  勤めるなどちゃくちゃくと肩書きにハクを着け、日本陸連の王道を歩んでいる。


川内は五輪代表選考レースである東京マラソンにも出る意向を示した。しかし代表選考レースで
1位(日本人として)の選手が別の選考レースに出るのは異例のことらしい。次で負ければ元も子もなくなる、福岡の記録が台無しになるということらしい。
 今後の選考レースを静かに見守っていれば、かなりの確率で代表に選ばれるだろうに、自分が納得しないから、東京マラソンに出るという心意気は買いたい。

ネットから見られるニュースからは陸連幹部が川内本人と話し合い、東京マラソンに出ることを「容認」したと伝えている。(中日スポーツ、スポニチ等)。

どちらも陸連幹部の発言の引用部分は同じで「好きなようにやったらいい」 と言われたそうである。中日もスポニチもどちらもこれを好意的に取り上げ、「陸連もお墨付き」という表現まで使っている。NHKはweb newsを見ると、陸連が「代表選考レースとしては非常に厳しい内容だった」と述べていると伝え、陸連がこのレース結果では代表にするかどうかわからないと予防線を張っている。


一連の報道や、5日夜のNHKスポーツニュースでの陸連会部の会見の模様の表情からは、陸連の冷たさが伝わってくる。ホント。
「好きなように・・・」という突き放した言い方、記録的には厳しい(これは本当だが)からは「容易には川内を代表にはしないぞ」という意思が伺える。 


日本陸連は、なぜこれほど川内に冷たいのか。
それは、彼が日本陸上競技連盟という「ムラ社会」の外にいる人間だからだ。

陸連は自分たちの仲間内の有望選手を五輪に送ってメダルを取らせることしかアタマにない。


高校駅伝の有望選手は、大学も駅伝有望校に進み、そこで実績をあげて実業団陸上部。ほとんどプロ選手として生活保証を受けて専属のコーチの下、科学的トレーニングとり理想の食事、そして高地トレーニングの環境も授けられる。のだと思う。瀬古自身もほぼそういうコースの人間だ。
陸連を頂点とするムラ社会を形成し、そのことで存在感を示していく。ムラにはボスがいて、全体を統率する。ここの掟から外れては将来日本陸上界の出世の階段は望めないのだろう。
瀬古はその王道を行っているのだろう。

こうしたムラ社会(それは「世間」とも言う)の中から有望選手が五輪で金メダルを取ることだけが、関係者の願いだ。外様の選手が代表になるだけでも、陸連が面目がつぶれるのに、もしメダルでも取ろうものなら、税金もつぎ込まれている陸連運営にも影響する。
陸連にとって川内選手のように自らの力で登りつめてきた人間は、要するに目障りなのだ。おカネもかけて大切に育ててきた選手を五輪に送り込みたいという“魂胆”がありありだった。

なんとも分かりやすい人々だ。陸連の面々は。
この人たちの人間的ないやらしさは、私は容認できない。

大きな背景には、日本の大衆が、「五輪で金メダル」をいつもスポーツ選手の至上命題として強いていることがあろう。「メダルの期待」というプレッシャーは、選手だけでなく、いやむしろ関係者の方が重荷なのかもしれない。
「国威発揚」というきな臭い言葉が、こと五輪スポーツには感じずにはおれない。

川内さん、陸連のムラ社会に負けるな。あまり見るスポーツは好きでない私だが、彼のことは応援する。埼玉県は彼を休職させるか、異動させてもう少しトレーニングができる環境に置いてあげればよい。国体開催権ではジプシー選手を県の外郭団体(スポーツ振興財団など)に雇って、総合優勝の点数稼ぎに使っているではないか。それにくれべれば、納税者の批判は少ないと思う。


そしてもうひとつ、メディアへの苦言。
スポーツ新聞は、陸連寄りの記事しか書かないのか。おそらくネタ元に睨まれると商売にさし障るからだろう。中日スポーツ、スポニチの記事にはがっかりした。(本誌を読んでいないので、詳細はわからないが。)

また、川内を市民ランナーとして持ち上げるのなら、企業選手と川内がどれほどトレーニング環境が違うかといった具体的な記事を読みたかった。
大会翌日の主催新聞社・朝日の記事を仔細に読んだが、そうした記事は見当たらなかった。
「25㌔で遅れたが、気力で挽回した」というステロタイプな、単純で中身のないスポ根解説を読まされただけだ。取材不足ですよ、朝日さん。主催者なのに。

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