2015年2月28日土曜日

図書館とのバトル② 構造化されている「モラルハザード」

 公立の図書館は「無料」だ。原則だれでも無料で出入りでき、その地域に住んでいて登録さえすれば無料で借り出しもできる。それは使用する者の「善意」に支えられている。使用者は蔵書を丁寧に扱い、盗むこともなく期限までにきちっと返す。少なくともその建前で成り立っていて、税金で運営されている。

 しかし“大衆社会”の現実は違う。図書館の蔵書を利用する者は、無料貸本屋感覚だ。そして利用者は“神様”である「お客様」だ。だから本をぞんざいに扱おうと、破損させようとまったく関係ない。それは「図書館側がなんとかするでしょ」ということなのだろう。

結果、どういうことが起こるか。巷間よく言われているのが図書館側の「無料貸本屋状態」と、慇懃無礼で不遜な利用者の増大だ。税金で賄われている公共財という、当たり前のことを小指の先ほどにも思わない多くの利用者が「地域の皆様」になっている。

 いま多くの図書館で、運営が「指定管理者」に委ねられている。受託した業者は、利用者拡大と「お客様へのサービス向上」で必死である。サービスが悪くてクレームが来ると、委託元の地方公共団体から「ちゃんとやれ」と言われる。利用者が減ると、「運営が悪いいんじゃないか」と言われる。

彼ら(受託業者)にとっては、「マナーの悪い利用者」は、「そういう人が居て困るんです」と言えば、委託元の自治体も、業者の努力不足とは「認定」できないから大目にみる。業者は、書籍がどうなろうとそれは受託費に関わらないからカンケイない。それは自治体予算でなんとかしてくれる。と、思っているのだろう。決して「悪意」ではないだろう。利益第一の業者にとって「カンケイないこと」に分類されるのは構造化されているということだ。

公共の図書館で起こっていることは、そうした「無責任の態勢」によるモラルハザードだ。
図書館の受け付けでは、利用者を「お客様」と呼び、利用者は「タダの商品」をぞんざいに扱う。

 普段利用する大田区の図書館では、借りた蔵書をムキ出しのまま自転車の買い物カゴに入れて返しに来る輩を何度も見た。中には小雨の中を平気でそうして返しにくる者も見かけた。「お客様」にとって、読んでしまった書籍はもはや「廃棄物」でしかない。だから平気でぞんざいに扱う。返さないと次に借りれないから仕方なしに返しにくるだけだ。

指定管理者「制度」は、こういう人を増やし続けている。指定管理者制度そのものが、業者をそう仕向けるようにしているのだ。少なくとも大田区のある図書館では、そうだった。
だからこそ、委託元となる自治体は、管理について細心の創意工夫が求められる。しかし、そうした意識はほとんど感じられなかった。

 (以下 次号)


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