2013年11月14日木曜日

図書館の利用者は「お客様」ではない。武雄市の「TUTAYA図書館」から考える。

69年生まれの44歳。
東大経済卒の
総務省出身
 佐賀県武雄市の市立図書館が話題になった。TUTAYAに運営を委託し、開館時間を伸ばしカフェを設け、書籍・雑誌の販売も行い、Tポイントもつくという。

 こと「文化」に関することなので新聞なども敏感で、文化欄等で論評や論考を掲載している。

 その運営方法に対して賛否があるが、確かに、これまでになかったという意味では「革新的」だし、全国の注目を集めたのも当然だろう。
日ごろから地域の公立図書館の運営に不満を持っていてる身としては、どうなっているのか興味を引く出来事だった。

 

で、それこそ図書館で、「図書館が街を創る。~『武雄市図書館』という挑戦」なる書籍を借りて読んだ。まあ、官僚出身の若手市長、樋渡啓祐(ひわたり けいすけ)氏による自らの政策の自慢本だ。こ。が、内容はそれなりに参考になる。

 コミュニティーデザイナーの山崎亮氏との対談によると、樋渡市長が図書館改革に乗り出したきっかけは、自分が図書館のヘビーユーザーだったが、それに不便を感じたからだという。

○樋渡氏が市長になった6年半前は、図書館の年間休館日が94日あった。それを34日に減らすのも大変だったこと。
○開館時間は午前10時から午後6時。毎週火曜日が休館日だった。これでは特定の人しか利用できないので、午前9時から午後9時にし、基本的に休暇日も設けなくした。
○カフェ席を100か所設けて、くつろいで本を選べるようにした。k
○雑誌を600タイトルそろえた。

等々、「スピードこそが最大の付加価値」と言う市長としては、2期目の自信からなのか腕力でTUTAYAとの提携でこうした改革を行ったことが記されている。

武雄市図書館(websiteより)

長すぎる前振りになった。やっと本題。

私が普段利用するのは都内の港区と大田区の図書館だ。両者とも運営は「指定管理者」の業者が行っている。

それなりにサービスに力を入れていて、カウンター業務はどちらもスムーズだ。でも、どちらにも、多少不満があるし、どうにかならないかと思う。

原因は何かと突き詰めて考えた。それは「利用者」を「お客様」と勘違いしている、指定管理者、そして利用者自身にあった。

 みなと図書館では、「利用者」のことを、「お客様」と呼びかけていた。指定管理者の業者の方針なのか、それとも委託元の港区役所の要請かは知らないが、すごく違和感を覚えたので、春にアンケートが行われた際に書いた。以下その時の要旨。

▼図書館利用はお客様ではない。お客様などと呼ぶから、利用者はつけ上がり、本をぞんざいに扱い、平気で盗んでいく輩が後を絶たない。
▼税金で賄われている施設の、あくまで単なる利用者なのだから、「お客様」などと呼ぶのはやめた方がいい。
そう書いたからかどうか分からないが、最近は「お客様」を聞かなくなった。

大田区の図書館ではこんなことがあった。借りに行った本を前に担当者が「この本は、汚れていますのでご注意ください」とぬかすではないか。見ると、おそらくコーヒーか何かをこぼして濡れたようだった。私は怒った。「借りた本を汚したのなら、弁償させるのが、まっとうな対応ではないか」なぜ、そのまま受け取り、また貸し出すのか。責任はどこにあるのか、と。

どういう場合に、弁償させ、どういう場合は見逃すのか。その基準はるのかないのか。聞いても納得いく答えは返ってこなかった。指定管理者の業者にどこまで権限があるのかさえ分からなかった。

 図書館は公的施設として開かれた場所だ。だから無料で本の閲覧、貸し出しを行う。それは法律でも決まっている当たり前のことだとう。だがここに落とし穴もある。

 行政は住民サービスの向上を目指し、「民間の知恵」を入れ、業者に委託する。(もちろん経費の節減が主目的なのは承知している)。受諾した業者はサービス向上に努め、「利用者」を「お客様」などと呼ぶトンチンカンな習慣ができたりする。また、お客様だから、少々「商品」が汚れたくらいで、「客」に弁償させるようなことはしない。

こうして、横柄で無神経な「客」が横行する。彼ら(大衆的人間)は、タダなら何でもやっていいと思っているから。

小雨が降り始めているのに、自転車の荷台にそのまま書籍を入れて帰っていく年配男性を見かけたこともある。本を汚さないために袋を持ってくる人など、あまり見かけない。

***************
武雄市の取り組み、図書館革命はよく分かった。開館日や時間の延長など、サラリーマンが利用しやすくする取り組みは大事だ。年寄や無業者のためだけに図書館があるのではない。主たる「納税者」にもっとサービスの目を向けるのは当然だ。

こうしたサービス向上には人件費がかかりなかなか難しい面もあろう。どう折り合いをつけていくかは、それこそ委託元の行政が知恵を絞るべき問題だ。

そして大田区図書館には、ひとつ提案したい。閲覧、貸し出し業務はとりあえず現行の時間でいいから、学習スペースは夜9時まで開けるべきだ。

せめて年末年始は、学習スペースを開放すべきだ。
29日から3日までしっかりお休みする大田区の図書館って何?。
日本は1月から本格的受験シーズンだ。頑張る学生に、行政ができるせめてものサービスだろう、場所を提供するのは。





0 件のコメント:

コメントを投稿