新聞見出しは罪深い。
●朝日:北島完敗 世界と差、泳ぎに迷い もがく北島、右肩に違和感「バランス一気に崩れた」、「超高速」の潮流乗れず、等々
●毎日:北島完敗5位、最後の微調整失敗、北島終盤に失速、「泳ぎかみ合わぬ」等々
●読売:北島伸びず完敗、泳ぎに迷い「五輪は難しい」、ライバルの訃報 心に穴 等々
●東京:北島100平は5位、「自身持てる所なかった」、高速化の波 北島のむ 等々
朝日新聞 |
朝毎読東を見比べると(サンケイは夕刊がないので除外した)、東京以外は「完敗」という表現を使っている。
確かに前の金メダリストなのだから、5位は「完敗」なのかもしれない。
しかし、勝手に事前に3連覇だとか、偉業にっ向かってとか「期待」ばかりしておいて、失敗する奈落の底へ落とすような表現になるのはどうかなんですかね。
読売新聞 |
北島は1982年9月生まれなので、いま29歳。もうすぐ30歳だ。トップスイマーとしてここまでやってこれたこと自体、賞賛に値するだろう。かつてこのブログで「年齢との戦いに勝った北島」と書いたが、五輪という大舞台では力及ばなかった。でもそれは責められることではないだろう。調整の失敗とか、心にスキとかもっともらしい理由は後出しジャンケンならだれでも言える。
毎日新聞 |
毎日は、「年齢が原因なのか」、「決勝8人の平均年齢は25.75歳。複雑なテクニックが要求される平泳ぎは他の種目に比べ、若さや勢いだけでは勝てない。」と書き、29歳という年齢が理由ではないと言いたいらしい。この記事の見出しは「最後の微調整 失敗」だと。あまりに酷な言い方ではないか。「狙いは金以外にはない。苦しみながら攻め、そして敗れた」(読売)というのが、まともな見方だ。
高速化の問題を詳報していたのは東京だった。朝日も見出しの割には、高速化の問題をよく書き込んでいた。高速化とは、前半50mを「パワフルに突っ込み、後半を高い運動能力でなんとか維持する泳ぎ」(朝日)のことだ。要するにテクニックより力強さで勝負ということだろう。こうした作戦は
去年の世界選手権で優勝したダーレンオーエン(ノルウェー)が取り入れて、100m平の潮流になった。という。東京は、それをわかりやすいイラストで説明していた。(これは共同の記事だ)
東京新聞 共同配信の記事 |
優勝したファンデルバーグは北京五輪後、平井コーチのもとを訪れ、指導を仰いだという。24歳、身長184cmの彼がテクニックを身に付けたパワースイムをすれば、身長177cm(五輪前の公式発表)の北島が勝つのは難しいことは、容易に想像がつく。
これまで体格差をテクニックで補ってきた北島。負けても賞賛に値すると私は思う。
彼はロボットでも操り人形でもない。北京五輪後、悩みながらの自分で泳ぎと向き合ってきた姿勢は人として当然のことだ。
(平井コーチのもとを去ったことが敗因という日刊ゲンダイなんかは論外だ。イエロージャーナリズムの最たるものだろう。)
東京(共同配信) |